皆さんこんにちは! 今回はタービダイトに見られる規則的な重なり、ブーマシーケンス(Bouma Sequence)について解説します。
タービダイトについて
ブーマシーケンスを解説するうえで欠かせないのがタービダイトです。タービダイトは海底での土石流である混濁流(乱泥流とも)による堆積物です。
もう少し詳しく説明すると、未固結の堆積物が水中で攪拌され、流れ下る現象による堆積物です。
ちなみにこの混濁流の発生は海底ケーブルの切断や津波の発生など、深刻な問題を引き起こします。
ブーマシーケンスとは
ブーマシーケンスはタービダイト中に見られる一連の堆積順序のことです。

ちなみにブーマは海洋地質学者・堆積学者のアーノルド・ヘイコ・ブーマ氏の名前に因んでいます。
ブーマシーケンスは5つの部分に分けられ、順番が変わることはありません。
各部分の違いは堆積時の混濁流の速さの違いによるもので、下位層であるほど堆積時の運動エネルギーが大きくなっています。
また、粒子の沈降速度の違いによって、下位層であるほど、粒径が大きくなる特徴があります。
各部分は上位層から
e:泥質岩部(pelitic division)
d:上位平行葉理部(upper division of parallel lamination)
c:カレントリップル葉理部(division of current ripple lamination)
b:下位平行葉理部(lower division of parallel lamination)
a:級化部(graded division)
となっています。

ブーマシーケンスの各部分の説明
e:泥質岩部(pelitic division)
e部(最上位部)では級化[1]されていない泥岩が見られます。生痕化石がみられることもあります。ただし、最上位層であるため、堆積以降に除去されてしまうことも多いため、残っていないことも多いです。
[1]級化:グレーディングとも。堆積粒子の粒径が堆積時の上向きに向かって小さくなっている堆積構造のこと。
[2]生痕化石:生物の巣穴などの生物自身ではなく、生物の作用によってできたものの化石。
d:上位平行葉理部(upper division of parallel lamination)
d部では(上から2番目)粗粒のシルト[3]と細粒なシルトが交互に平行に堆積してできた平行葉理が見られます。
[3]シルト:1/16-1/256の砕屑物粒子のことで、泥のうち粒径が大きいもの。
c:カレントリップル葉理部(division of current ripple lamination)
c部では水流等の一方向の流れに対してできるベッドフォーム[4]の一種のカレントリップルが見られます。また、地震や混濁流の発生で火炎構造[5]やコンボリュート葉理[6]が見られることもあります。
[4]ベッドフォーム:水底に見られる模様。リップルやデューンなどがあり、流速や水深、粒径などによって決定される。
[5]火炎構造:堆積構造の一種。未固結の堆積物の上に高い密度の堆積物が堆積することによってできる。名前はその形が火炎の様であることから。
[6]コンボリュート葉理:堆積構造の一種。波状に強くゆがんだ葉理の構造のこと。未固結の状態で地震などのショックにより流動化してできる。
b:下位平行葉理部(lower division of parallel lamination)
b部では細粒~中粒の砂が平行に堆積した平行葉理が見られます。また、フルートキャスト[7]やグルーブ[8]が見られます。
[7]フルートキャスト:一方向の流れによる渦によって水底にできる窪み。
[8]グルーブ:流れによって運搬される礫などが、水底を削ってできた窪み。
a:級化部(graded division)
a部(最下部)では細粒~粗粒の砂が級化[1]しています。この級化は各粒子の沈降速度と粒径の関係によるもので、粒径が大きいほど速く沈降するため、級化が見られるところでは堆積時の上位に向かって堆積物の粒径が小さくなります。 また、a部では皿状構造[9]や偽礫[10]が見られます。
[9]皿状構造:層理面と平行で上向きに凹の形をした堆積構造。
[10]偽礫:リップアップクラストとも。未固結の地層の一部が上位層に取り込まれて礫のようにみえるもの。不規則な形が特徴的。
参考資料
Bouma, Arnold H. (1962). Sedimentology of some Flysch deposits: A graphic approach to facies interpretation. Elsevier. p. 168 p.
専門用語を知るページ|地質を学ぶ、地球を知る|産総研地質調査総合センター / Geological Survey of Japan, AIST (gsj.jp)
ソール・マークとは – コトバンク (kotobank.jp)
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