みなさんこんにちは
今回は海洋酸素同位体ステージ(MIS)についての解説です。
海洋酸素同位体ステージは第四紀の環境を知るために重要なものです。本記事では海洋酸素同位体ステージとは何か?どのように調べたのか?ステージの例などをまとめています。
海洋酸素同位体ステージとは何か?
海洋酸素同位体ステージは海洋中において酸素の同位体である$$^{18}Oと^{16}O$$の比の変動をステージで区分したもので、氷期・間氷期を表す際などに使われます。
どういうことなのか、こちらのグラフをご覧ください。
酸素同位体の比は時代によって異なっていることが分かっており、氷期(氷河期)は酸素同位体比が高く、間氷期は酸素同位体比が低くなります。(グラフの縦軸は正負が逆になっているので注意!)
海洋酸素同位体ステージは酸素同位体比の変動から分かる、氷期と間氷期に新しい順にステージの番号を振っているものです。氷期のものが偶数、間氷期のものが奇数となっています。
このステージは大まかに振ったものであるため、より細かいサブステージは小数点やアルファベットを使って表されます。例えば5e(5.5)はe(.5)が奇数にあたるため、間氷期であることが分かります。
酸素同位体比と気候の関係
そもそもなぜ、酸素同位体比によって氷期か間氷期か分かるのでしょうか。以下で説明します。
酸素同位体は、酸素の原子核内にある中性子の数によって区別されているもので、メジャーなものは$$^{16}O 酸素16(中性子が16個)$$と$$^{18}O 酸素18(中性子が18個)$$です。
中性子が多い同位体は比較的重く、少ない同位体は比較的軽いという特徴があります。
なお、同位体比は$δ^{18}O$と表され、以下の式で示されます。
$δ^{18}O=\left(\frac{{(^{18}O/^{16}O){sample}}}{{(^{18}O/^{16}O){standard}}}-1\right)\times1000 ‰$
上の式での${(^{18}O/^{16}O){standard}}$は標準の酸素18と酸素16の比で、国際的な標準サンプルのものです。
$δ^{18}O$が大きいと酸素18の比が大きく、小さいと酸素16の比が大きいということになります。
軽い$^{16}O$は蒸発する水蒸気に含まれやすく、重い$^{18}O$は蒸発する水蒸気に含まれにくいという特徴があります。
このことがとても重要です。
まず、間氷期の場合を考えてみましょう。海から蒸発した水蒸気は雨となり、陸や海に降り注ぎ、陸に降った水は川や地下水を通じて海に戻ってきます。
一方で、氷期の場合は海洋から蒸発した水蒸気は雪となり、陸に降った雪はそのまま氷河などとして陸にそのまま留まります。
そのため、海洋における酸素同位体の比$δ^{18}O$は間氷期に小さく、寒冷な氷期に大きくなります。
海洋酸素同位体ステージはどのように調べられたか
海洋酸素同位体ステージは多くののプロジェクトで調べられ、海洋底コアサンプル中の有孔虫を使い、酸素同位体比が出されました。
以下のリンクから、ステージをまとめた表を見ることができます。
ミランコビッチ・サイクルとの関係
ミランコビッチ・サイクルは地球の地軸の向きの変化、歳差運動の変化、公転軌道の離心率の変化によってもたらされる、約10万年周期のサイクルのことです。
このサイクルにより、地球の環境が変化し、海洋酸素同位体の大きな変化は約10万年周期であることと一致します。
海洋酸素同位体ステージの例
MIS 1:現在の間氷期のステージ
MIS 2:最終氷期を含むステージ
MIS 5e:最終間氷期
MIS 11:現在の間氷期と気候が似ている
MIS 19:最高海面と気候の最温暖化の年代にずれが見られる。地磁気逆転の影響が考えられる。
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