地層や岩石のなかには過去の地磁気の向きが保存されていることがあります。これはどのような仕組みで残るのでしょうか? 今回は残留磁器について学びましょう!
地磁気の向きは変わる!
いまだに理由は不明であるが地磁気の向きは変わることがあります。
地磁気の向きは南北逆転することもあり、このことを「地磁気の逆転」といいます。
千葉県市原市にはこの地磁気の逆転を記録した地層があり、これに因んで“チバニアン”という地質年代ができました。
以下のリンクにチバニアンについての解説が詳しく書かれています。
誕生!チバニアン/千葉県 https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/chibanian/index.html
残留磁気
地層や岩石の中では、形成時に地磁気の向きが保存されます。この残留磁気は主に「熱残留磁気」と「堆積残留磁気」の2種類が知られています。
熱残留磁気
岩石には磁性を持つ鉱物(例:磁鉄鉱-Fe3O4)が含まれていることがあります。これらの鉱物はキュリー温度を超えると磁性を失います。そのため、マグマの状態では磁性をもちません。
キュリー温度は磁性をもつ金属が磁性を失う温度です!
例えば、鉄は約1044K(=約771℃)と知られています。
マグマの温度が下がり、キュリー温度を下回ると岩石が磁気を帯びるようになります。磁場(磁力の及ぶ範囲)では岩石が磁気をもつときに磁力線と同じ向きになります。地球には地磁気があるので、マグマがキュリー温度を下回ったときの地磁気の向きが岩石に保存されます。
図1の方位磁石は岩石中の鉱物の磁界の向き(方位磁石が北を指す向き)を表しています。
この残された磁気を「熱残留磁気」と言います!
堆積残留磁気
堆積物を構成する粒子には磁鉄鉱などの磁性をもつ鉱物が含まれます。海中で粒子が沈んでいくとき、磁性を持つ鉱物が磁力線の向きを向きながら沈みます。そして、堆積するときに磁性をもつ粒子の向きが地磁気と同じ向きになり、堆積した時の磁気を保存します。
海底に着地した時に粒子の向きが変わることがあるので、堆積残留磁気は熱残留磁気より正確性に欠けています。
残留磁気の利用
残留磁気はその性質から様々な調査に利用されています。今回はその中でも有名な3つを解説します!
海洋底の移動速度
海洋底の残留磁気を分析すると地磁気の逆転が記録されていることが分かります。また、残留磁気を含む岩石・地層の年代を計測することで地磁気が逆転した時期を知ることができます。
そもそも海洋底はプレートの運動に伴って移動しており、海嶺で生まれ、広がり、海溝に沈みます。
海底の残留磁気は海嶺のマグマの温度がキュリー温度を下回った時のものです!
地磁気の逆転は何度も起きているので、海底は北極にN極がある時と北極にS極があるときの残留磁気が交互に分布しています(図3)
地磁気が逆転した年代はわかっているので、地磁気の向きが同じ範囲の海洋底の長さ(図3のA)を計測すれば、(図3のAの長さ)÷(同じ地磁気の向きが続いた時間)でプレートの移動速度を求めることができます。
磁極の位置
方位磁石が北を指す方向は大昔から変化し続けています。岩石や地層中の残留磁気を調べることで過去の磁極の向きを知ることができます。
磁極は地球を大きな磁石と見立てた時のN極とS極に当たります。
陸地の移動
インドが大昔は赤道上にあったという話を聞いたことがあるでしょうか?
また、日本列島が大昔はユーラシア大陸にくっついていたという話は聞いたことがあるでしょうか?
こういった大陸移動や島の歴史も残留磁気の向きから知られることとなったのです。
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