皆さんこんにちは
今回はトゥファとは何か解説を作りました。加えて、国内でトゥファが見られる場所をまとめました。
トゥファの概要

トゥファは英語でTufaと言い、炭酸塩堆積物(石灰質の堆積物)の一種です。

トゥファというと台湾のスイーツのトゥファ(豆花、DouHua)が思い浮かぶ人もいるかも知れませんが、何も関係ありません!

トゥファは石灰質であることからもわかるように石灰岩地域で見ることができます。トゥファの特徴は穴が沢山空いた様子です。これは微細な方解石がゆるく固結しているためです。

トゥファは天水(雨などの地表から染み込み水)に石灰岩の主成分である炭酸カルシウムが溶け込み、それが急速に堆積したものです。
同じように温泉水の炭酸カルシウムが堆積するとトラバーチンと呼ばれ、鍾乳洞で堆積すると鍾乳石と呼ばれます。
また、トゥファは季節によって堆積の様子が変わる特徴があるため、厚い緻密層と薄い孔隙質層がまるで木の年輪のようにリズミカルに繰り返しています。そのため、昔の気候を研究する際に使われることがあります。
トゥファができる環境
石灰岩地域は日本各地にありますが、必ずトゥファが形成されるかというとそうではありません。では、どういった環境で形成されるのでしょうか。以下の3つが重要となります。
なお、トゥファには河川で形成されるものと湖沼で形成されるものがありますが、今回は河川成のトゥファについて解説します。
1.炭酸カルシウムが多く溶け込んだ水
2.長い急斜面
3.シアノバクテリアの働き
トゥファは湿潤な地域でよく形成されます。これはトゥファを形成する炭酸カルシウムが水に溶ける必要があるからです。そして、多くの炭酸カルシウムが溶けている必要があります。
具体的にはCa2+濃度が45mg/Lより大きい(Kano et al.,1998)、カルサイト飽和指数(SI)が0.5より大きい(Kano et al.,1998)という条件下でトゥファが発達します。
カルサイト飽和指数は炭酸カルシウムの鉱物であるカルサイトが溶解するか、沈殿するかを示す指標で、負だと溶解、正だと沈殿を示します。
また、地形的な条件としては長く急な斜面上で形成されやすいことが分かっています。これは炭酸カルシウムの溶けた水から二酸化炭素が抜けやすいためです。(Hori et al.,2006)
なぜ二酸化炭素なのでしょうか?これを理解するためにまず以下の化学反応式をご覧ください。
$$\mathrm{CaCO_3 + H_2O + CO_2 \rightleftharpoons Ca^{2+} + 2HCO_3^-}$$
こちらは炭酸カルシウム(CaCO3)が水に溶けるときの化学式です。左辺は溶ける前、右辺は溶けたあとの状態を示しています。
左辺を見ると分かるように、炭酸カルシウムが水に溶けるためには二酸化炭素が必要となります。二酸化炭素は水に溶ける性質があり、雨水などにも含まれています。
右辺では溶けた炭酸カルシウムは水の中でカルシウムイオン(Ca2+)と炭酸水素イオンとなることががわかります。
以上より、炭酸カルシウムが水から析出する(=トゥファを形成する)ためには二酸化炭素が水から抜ける必要があるのです。
流れが激しくなる急斜面が長く続くような地形は二酸化炭素が急速に抜けやすいため、その分炭酸カルシウムが沈殿し、トゥファが発達するのです。
さらに、トゥファの形成にはシアノバクテリアと呼ばれる細菌の存在が重要であることがわかってきました。

シアノバクテリアが炭酸カルシウムの鉱物であるカルサイトを捕えることで、カルサイトの結晶の核となり、結晶が成長することでトゥファが形成されるということです。
シアノバクテリアは結晶の核をもたらす酸性の高分子化合物を分泌する性質を持つため、トゥファの形成に重要であるのです。また、シアノバクテリアは光合成するため、それによって二酸化炭素が消費されるため、二酸化炭素が抜けて炭酸カルシウムの飽和度が上がることで、カルサイトが形成されやすくなりトゥファが形成されるという説もあります。
シアノバクテリアによって堆積物が形成される例は他にもあります。ストロマトライトはシアノバクテリアによってできる層状の岩石で、先カンブリア時代に多く形成されました。現在でもオーストラリアなどで観察することができます。
国内でトゥファが観察できるスポット
フミダカーラのトゥファ(沖縄県石垣市)
石垣島北西部のフミダカーラと呼ばれる川で観察することができます。フミダカーラのトゥファは沖縄県内最大規模だそう。2016年に市の天然記念物に指定されています。

福江島のトゥファ(長崎県五島市)
五島列島最大の島である福江島北西部の海岸でトゥファを観察することができます。こちらのトゥファは2021年に確認されました。

徳之島のカスケード型トゥファ(鹿児島県大島郡伊仙町)
徳之島西部の小原海岸にトゥファがあります。ここのトゥファはカスケード型、つまり連なった小さな滝状となっています。
中津川のトゥファ(愛媛県西予市)
愛媛県西予市の四国カルスト地域には全長380mのトゥファが存在しています。
大賀台のトゥファ(岡山県高梁市)
岡山県高梁市の長屋集落付近に存在する長屋の沢には全長1200mのトゥファの堆積場が存在しており、特に下流部273mで発達しています。(Hori et al.,2006)
秋芳洞のトゥファ(山口県美祢市)

日本有数の鍾乳洞である秋芳洞の出口付近にトゥファが存在しています。
平尾台のトゥファ(福岡県北九州市)
日本三大カルストの平尾台の石坂湧泉から流れ出す地下水によってできた川の川底にトゥファが発達しています。
阿哲台のトゥファ(岡山県新見市・真庭市)
阿哲台には36箇所でトゥファが確認されています。
打波川流域のトゥファ(福井県大野市)
ここではトゥファが滝状になったり、リムストーン(百枚皿)状になっています。
参考資料

Kano, A., Sakuma, K., Kaneko, N. and Naka, K., 1998, Chemical propertiesof surface waters in the limestone regions of western Japan: Evalua-tion of chemical condition of tufas. Jour. Sci. Hiroshima Univ. Ser.C, 11, 11-22.
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