みなさんこんにちは
隕石クレーターの特徴として負の重力異常があげられます。今回はこれはなぜかを解説します。
隕石クレーターの負の重力異常の例
まずは実例を見てみましょう。
フランスのRochechouart衝突構造(impact structure)を例に説明します。
衝突構造は隕石衝突によってできた地質構造のことです。クレーターは地形が残っていないとクレーターと呼ぶことはできません。
衝突構造は風化や侵食、埋没などの原因により、地表面でははっきりとわからないものの、隕石の衝突があったとわかる構造のことです。
このRochechouart衝突構造では同心円状に重力異常が見られます。この図には数値はありませんが、中心に向かうほど負の重力異常が大きくなります。
負の重力異常について
負の重力異常は計測して補正された重力と標準重力(ジオイド上の重力)の差のことです。
負の重力異常はその場所における重力の大きさが本来の重力の大きさよりも小さいことを示します。
重力が小さいのはその場所の地下の密度が小さいことによります。例えば、堆積物の間に隙間が沢山あったり、地盤にひびが入っていたり、地下水が多かったりといった理由です。
重力異常についてはこちらで詳しく解説していますので良ければご覧ください
隕石クレーターに負の重力異常が見られる理由
隕石クレーターに負の重力異常が見られる理由は、主に2つです。
1.クレーターを衝突時の破砕物(岩盤に比べて低密度)が埋めているから
2.岩盤が破砕されて密度が低くなるから
また、隕石クレーターで負の重力異常が同心円状に見られるのは、クレーターは中心ほど深くなり、その分多くの低密度の破砕物が埋まるためです。
加えて、中心ほど強い衝撃を受けてより岩盤が破壊されることも原因となります。
負の重力異常だけではクレーターとは言い切れない
負の重力異常は地下の密度が低ければ見られるので、クレーター以外でも見ることができます。
そのため、同心円状の負の重力異常というのがカギとなります。しかし、同様の構造はコールドロンでも見ることができます。
コールドロンはカルデラの痕のことです。
高松クレーターの例
負の重力異常で、クレーターなのではないかと一時期スクープとして取り沙汰された例があります。それが、香川県高松市での”高松クレーター”です。
確かに、同心円状の負の重力異常が見られますよね。
当時は日本でクレーターが発見されておらず(現在は長野県で1か所見つかっている)、国内初なのではないかと期待されていたようです。
しかし、クレーターとされる場所の地質は溶結凝灰岩や火砕流堆積物といった、カルデラで特徴的なものでした。
また、火山ガラスの年代が周辺の火山岩と一致しているため、クレーターとは考えにくいのです。
現在では、コールドロンであろうと考えられています。
クレーターかどうかは複合的に判断する
以上のような例があるため、クレーターかどうかは複合的に判断されます。
例えば、クレーターの負の重力異常に加えて以下のようなものが指標として使われます。
- スフェルールの有無
- 地形
- 白金族元素の濃集
- 石英におけるPlanar Deformation Featuresの有無
- 基盤岩の亀裂の方向
- シャッターコーンの有無
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