隕石クレーターに負の重力異常が見られるのはなぜか?

大学地学

みなさんこんにちは

隕石クレーターの特徴として負の重力異常があげられます。今回はこれはなぜかを解説します。

隕石クレーターの負の重力異常の例

まずは実例を見てみましょう。

By The original uploader was Geneamichaud at French Wikipedia. – Transferred from fr.wikipedia to Commons., CC BY-SA 2.0 fr, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36853254

フランスのRochechouart衝突構造(impact structure)を例に説明します。

衝突構造は隕石衝突によってできた地質構造のことです。クレーターは地形が残っていないとクレーターと呼ぶことはできません。

衝突構造は風化や侵食、埋没などの原因により、地表面でははっきりとわからないものの、隕石の衝突があったとわかる構造のことです。

このRochechouart衝突構造では同心円状に重力異常が見られます。この図には数値はありませんが、中心に向かうほど負の重力異常が大きくなります。

負の重力異常について

負の重力異常は計測して補正された重力と標準重力(ジオイド上の重力)の差のことです。

負の重力異常はその場所における重力の大きさが本来の重力の大きさよりも小さいことを示します。

重力が小さいのはその場所の地下の密度が小さいことによります。例えば、堆積物の間に隙間が沢山あったり、地盤にひびが入っていたり、地下水が多かったりといった理由です。

重力異常をわかりやすく解説
地球の内部構造知る手段として、重力異常を計測するという方法があります。この重力異常とはどのようなものでしょうか? わかりやすく解説しようと思います!そもそも…重力とは何か?そもそも重力とは何でしょうか? 簡単に説明すると、...

重力異常についてはこちらで詳しく解説していますので良ければご覧ください

隕石クレーターに負の重力異常が見られる理由

隕石クレーターに負の重力異常が見られる理由は、主に2つです。

1.クレーターを衝突時の破砕物(岩盤に比べて低密度)が埋めているから

2.岩盤が破砕されて密度が低くなるから

また、隕石クレーターで負の重力異常が同心円状に見られるのは、クレーターは中心ほど深くなり、その分多くの低密度の破砕物が埋まるためです。

加えて、中心ほど強い衝撃を受けてより岩盤が破壊されることも原因となります。

負の重力異常だけではクレーターとは言い切れない

負の重力異常は地下の密度が低ければ見られるので、クレーター以外でも見ることができます。

そのため、同心円状の負の重力異常というのがカギとなります。しかし、同様の構造はコールドロンでも見ることができます。

コールドロンはカルデラの痕のことです。

高松クレーターの例

負の重力異常で、クレーターなのではないかと一時期スクープとして取り沙汰された例があります。それが、香川県高松市での”高松クレーター”です。

高知地域重力図 Gravity Map of Kochi District(駒澤正夫・名和一成・村田泰章・牧野雅彦・佐藤秀幸・上嶋正人・岸本清行・大熊茂雄・大野一郎・村上英記・志知龍一、産総研 地質調査総合センター )
徳島地域重力図Gravity Map of Tokushima District (駒澤正夫・牧野雅彦・村田泰章・名和一成・上嶋正人・大熊茂雄・西村敬一・赤松純平・志知龍一・大野一郎・村上英記、産総研 地質調査総合センター)
https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php#13,34.27752,134.06194

確かに、同心円状の負の重力異常が見られますよね。

当時は日本でクレーターが発見されておらず(現在は長野県で1か所見つかっている)、国内初なのではないかと期待されていたようです。

しかし、クレーターとされる場所の地質は溶結凝灰岩や火砕流堆積物といった、カルデラで特徴的なものでした。

また、火山ガラスの年代が周辺の火山岩と一致しているため、クレーターとは考えにくいのです。

現在では、コールドロンであろうと考えられています。

クレーターかどうかは複合的に判断する

以上のような例があるため、クレーターかどうかは複合的に判断されます。

例えば、クレーターの負の重力異常に加えて以下のようなものが指標として使われます。

  • スフェルールの有無
  • 地形
  • 白金族元素の濃集
  • 石英におけるPlanar Deformation Featuresの有無
  • 基盤岩の亀裂の方向
  • シャッターコーンの有無

参考資料

重力異常について(解説)
御池山隕石クレーターに検出された負の重力異常 | CiNii Research
高松クレーター論争の検証
J-STAGE

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