皆さんこんにちは!Twitterの方で「地学の楽園シリーズ」と題して各県の地学スポットを紹介しているピカイア(@pikapikapikaia)です。ご覧くださったみなさん、ありがとうございます。毎回多くの反響があってとてもうれしいです。この企画を通して地学に興味を持っていただいたり、調べたり、実際に足を運ぶきっかけになればと思っています。
さて、今回は第五弾の和歌山編の詳細です。
内容に誤りがあったり、誤字誤植があればコメントの方から教えてください。
なお、化石産地や鉱物産地は産地保護の観点から詳細な場所の紹介はしません。こちらは各自でお調べください。
世界最大級の熊野カルデラ
そもそも、和歌山にカルデラがあるイメージがない方が多いと思いますが、実はあります。それも世界最大級です。
熊野カルデラは1500万年前の新第三紀中新世に噴火を起こした火山で、噴火の爆発指数であるVEIは最大の8です。南九州の縄文文化を消し去った鹿児島の鬼界カルデラの噴火がVEI7で、2022年1月のトンガでの噴火がVEI6といわれているので如何にとんでもない噴火かわかると思います。(規模がでかすぎてピンとこないと思います、私もそうです。)
紀伊半島での降水が多く、風化が進んだためカルデラは殆どあるのかわからなく、「古座川弧状岩脈」と呼ばれる噴火による岩石・奇岩群がところどころに残っています。古座川弧状岩脈には橋杭岩、古座川の一枚岩、天柱岩などがあり、「日本の地質百選」にも選ばれています。
日本最大級の一枚岩(古座川の一枚岩)
古座川の一枚岩は前述の熊野カルデラの一部である「古座川弧状岩脈」に含まれる巨大な一枚岩です。硬く固結した流紋岩質の凝灰岩が周囲より風化されず、断層によって破壊されなかったことにより、一枚岩の状態で残っています。
日本三名瀑のひとつ(那智の滝)
那智の滝は栃木の華厳の滝、茨城の袋田の滝と並ぶ日本三名瀑のひとつに数えられています。この滝は流紋岩の硬い地層と熊野層群という堆積岩の比較的軟らかい地層の境界に位置し、軟らかい地層が侵食されたことによってできました。
和歌山県の鉱物 玻璃長石
和歌山県では玻璃長石という鉱物が県の鉱物とされています。玻璃長石はサニディンと呼ばれる鉱物であり、カリ長石の一種です。玻璃長石のうちNaが多く含まれるものをアノーソクレース、このうち外見が美しいものをムーンストーンといいます。
虫に食われたような岩(虫喰岩)
虫喰岩は古座川町にある無数の穴が開いた岩です。この無数の穴を持つ構造はタフォニと呼ばれ、岩石内にできた塩の結晶の圧力により物理的な風化をうけてできるとされています。
液状化の化石(権現崎の泥岩岩脈)
権現崎の泥岩岩脈は白浜町にあります。泥岩岩脈とは泥が地層に入り込んで脈状になったもののことで、この場所の泥岩岩脈は過去の液状化現象によってできたと考えられています。そのため、この岩脈は液状化の化石といえます。
実は和歌山にもカルストあります(白崎海岸)
白崎海岸は由良町にあります。この場所は石灰岩でできており、カルスト地形特有のカッレンフェルトと呼ばれる柱状の石灰岩が林立する地形やドリーネと呼ばれる窪地を見ることができます。この場所はその風景から“日本のエーゲ海”とも称されます。
隆起と浸食でできた段丘(海岸段丘)
プレート境界である南海トラフに近い和歌山県では隆起が盛んであり、隆起と海による侵食を繰り返したことで、階段状の海岸段丘ができました。県内では紀伊大島・潮岬、白浜町、印南町などでよく見られます。
石が川底にあけた穴(釜滝の甌穴)
甌穴はポットホールとも呼ばれ、釜滝の甌穴は紀美野町にあります。この地形は石などの粒子が川の流れによって川底を削りできた穴のことです。
ダイナミック海食崖(三段壁)
三段壁は白浜町に大規模な海食崖です。前弧海盆と呼ばれる、島弧(日本列島のような弓なりの列島)の海溝側のくぼみに溜まった堆積物が海に侵食されてできた絶景です。
サドンロック
サドンロックは前述の三段壁において2018年の台風30号で崩れ落ちた巨大な岩です。突然現れたことから“Sudden Rock(サドンロック)”と名付けられました。
豪雨による戦後最大の崩壊(北寺の崩壊・金剛寺の崩壊)
1953年に現かつらぎ町で大規模な水害が発生しました。この際に北寺地区では大規模崩壊にり、集落は大部分が埋没し、金剛寺地区では崩壊が川をせき止めたことで、天然ダムが形成され、水が溢れ、のちに崩壊して下流で洪水が発生するなどの大被害が出ました。
砂岩の海食台(千畳敷)
千畳敷は白浜町にあります。この場所は砂岩のなだらかな海底(波食台)が隆起してできた景勝です。
和歌山は恐竜の楽園でした
和歌山県内では実は恐竜の化石が見つかっています。湯浅町には白亜紀前期の湯浅層という地層が分布しておりここから肉食恐竜の化石が見つかっています。
さざ波の化石(白浜の化石漣痕)
白浜の化石漣痕は白浜町にあります。漣痕とはさざ波が海底につくる跡のことで、よく”さざ波の化石”と呼ばれます。(漣は訓読みでさざなみ) また、リップルマークとも呼ばれます。
「つ」型の大褶曲(フェニックス褶曲)
フェニックス褶曲はすさみ町にある褶曲(しゅうきょく)です。この場所では見事な「つ」の字型の褶曲(地層が圧縮してぐにゃりと変形したもの)が見られます。
このフェニックスというのは褶曲の区分ではなく、付近の地名「アマドリ(天鳥)」を英訳したことによるみたいです。
コメント
白浜の三段壁は前孤海盆堆積体の田辺層群で、砂岩でできています。熱水による変成作用を受けて固化していますが、火成岩ではありません。
ご指摘ありがとうございます。地質を確認した結果火成岩ではありませんでした。また、論文や省庁、ジオパークのサイトで調べると、そもそも柱状節理があるかも微妙な感じでした。間違った情報を載せてしまい申し訳ありませんでした。訂正させていただきます。
「地学の楽園シリーズ和歌山編」の地図に記載されている白浜町三段壁の「柱状節理」の記載は、仲江さんの「コメント」によるご指摘にもあるように、明らかに間違いです。できれば早く訂正されることを期待します。しかし、もし和歌山県の「柱状節理」について紹介していただけるなら、串本町大島の樫野崎のそれをご紹介いただければありがたいです。
なお、序でに書かせていただきますが、もし機会があれば、御坊市から日高郡みなべ町高野(新発見)、田辺市龍神村を経て奈良県の玉置山に繋がる中生代末期の枕状溶岩のことも話題に取り上げていただければ嬉しいです。