震度7より大きい震度8や震度10が存在しないのはなぜか。

固体地球分野

皆さんこんにちは。

日本では数年に一回程度、最大震度7を記録するような大地震が発生しています。東日本大震災や阪神淡路大震災、熊本地震などです。このような大きな地震が発生すると甚大な被害が生じ、多くの人々の生活に影響が出ます。

そんな恐ろしい震度7を観測するような地震ですが、皆さん一度はこんなこと思ったことないでしょうか?「なんで震度7より大きい震度8や震度10は無いの?」ということを…

ということで、今回は震度7とは何か、震度8や10が無いのはなぜかを解説します!

震度とは

震度はその場所の揺れの大きさの度合いを示す指標で、地震の規模を示すマグニチュードとは異なります。

マグニチュードが小さい地震でも震源が浅く、震源からの距離が近ければ観測される震度は大きくなり、マグニチュードが大きい地震でも震源が深く、震源からの距離が遠ければ観測される震度は小さくなると予想されます。

※ただし、条件により異常震域という状態が見られる場合もあり、震源から離れた場所で大きな震度を観測することもあるため、あくまで傾向です。

震度はかつては体感や被害の大きさによって判断されていましたが、1996年4月以降は計算して震度を割り出しています。計算して割り出した震度を計測震度と言います。

震度の計算方法

震度は地震の加速度をもとに計算しています。加速度は1秒当たりの速度の変化を表すものです。この加速度が大きいと揺れが激しいと言えます。

通常、加速度はm/s2 (メートル毎秒毎秒)で表されますが、地震に関してはgal(ガル)という単位を用います。

1gal=0.01m/s2 です。

ちなみにgalはガリレオガリレイに因んで名づけられました。

震度はざっくり説明すると以下のような流れで計算されます。(気象庁ホームページより要約)(難しい言葉は無視してかまいません)

1.地震の加速度記録をフーリエ変換する。(フーリエ変換は波形を三角関数の和とする変換)

2.計算のために補正するフィルターを掛ける

3.逆フーリエ変換する(フーリエ変換の逆)

4.水平2成分、垂直1成分の波形をベクトル的に合成

5.合成したものの加速度の大きさの絶対値がa以上の合計時間が0.3秒になるようなaを求める。

6.計測震度Iとして、 I=2loga+0.94  を計算し、小数第3位を四捨五入し、小数第2位を切り捨てる。

震度7はどのくらいの大きさの揺れか

震度7は前述の計測震度が6.5以上の揺れです。この震度7に上限はなく、仮に計測震度が8や9であったとしても震度は7です。

計測震度7.0は計測震度の式 I=2loga+0.94 に当てはめると

a=1072(gal)となります。 地球の重力加速度が980galであるため、相当大きいことが分かるでしょう。なお、この値は最大加速度ではなく、加速度の大きさの絶対値がa以上の合計時間が0.3秒になるようなaです。

なお、震度7を計測した地震は以下の通りです。

地震名発生年計測震度
兵庫県南部地震(阪神淡路大震災の地震)19956.6
中越地震20046.5
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災の地震)20116.6
熊本地震前震20166.6
熊本地震本震20166.7
胆振東部地震20186.5

震度8や10は計算上存在できる

震度の階級と計測震度の対応は以下の通りです。

震度階級計測震度
0~0.5
10.5~1.5
21.5~2.5
32.5~3.5
43.5~4.5
5弱4.5~5.0
5強5.0~5.5
6弱5.5~6.0
6強6.0~6.5
76.5~

上記のように震度階級±0.5の計測震度がその震度階級になるように設定されているため、計測震度7.5以上8.5未満を震度8、計測震度9.5以上10.5未満を震度10とすることは計算上可能です。

しかし、現状震度8や震度10はありません。

震度7より大きい震度が無いのは作っても意味がないから⁉

震度8が存在すると、加速度の大きさの絶対値がa以上の合計時間が0.3秒になるようなaは3388gal、震度10ならaは33884galとなります。

計測震度の計算式には対数が入ってるため、震度階級が大きくなると、指数関数的にaの加速度が大きくなります。

これらの揺れは大きいです。現時点で国内で観測された最大の計測震度は熊本地震の6.7(加速度の大きさの絶対値がa以上の合計時間が0.3秒になるようなaは758gal)であり、7.0を超えたことは一度もありません。

さらに震度7は壊滅的な被害を出すような揺れであり、これ以上大きな震度を設定しても壊滅的な被害であることには変わらず、あまり意味がないのです。

ただ、計測震度7.5以上の地震が実際に発生すれば震度8を設定する議論が起こる可能性はなくはないです。

ということで震度7より大きな震度がない理由は主に以下の2つ

1.計算上震度8に該当する計測震度7.5以上の地震は観測されたことがない。それどころか計測震度7.0以上の地震すら観測されたことがないため。

2.震度7で壊滅的な被害をもたらすため、8があったところで同じように壊滅的な被害が出るだけで、防災上区分する意味があまりないため。

参考資料

気象庁|強震観測について|計測震度の算出方法 (jma.go.jp)

気象庁 | 震度について (jma.go.jp)

コメント

タイトルとURLをコピーしました